婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです3
『一日だけ猶予をやる。それがせめてもの恩情だと思え』 元婚約者の声をまざまざと思いだし、フィアルカは奥歯を噛む。 猶予といったところで――フィアルカにはろくな財産がない。いまいるこの自宅も間借りしているだけだし、見回しても、売って当面の資金…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです2
腹に響くような低い声。大きな手が頬に触れ、フィアルカはとっさに顔を背けた。 ――ラピスは狼のときでも遠くまでよく届く声をしているが、人の姿になると聞く者を酔わせるような低音を帯びる。 だが、それにしたところでいまの声は不自然なほど甘いとフ…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです1
ちくしょう、とフィアルカは心の中で精一杯罵った。 罵りながら、すみれ色の目の奥に刺されたような痛みを感じ、次から次へと涙をこぼした。そのたび、手にしていたナイフをいったん置いて、布巾で拭った。新鮮な玉葱を切ったときとは違う、ただただ後から…
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「婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです~食いしん坊オオカミと狩りからはじめる魔物料理~」目次
落ちこぼれ聖女のフィアルカは、特別な料理を作れることで役に立っていた。だが濡れ衣を着せられ、婚約破棄され、追放されてしまう。相棒の巨大狼と一緒に国境を越えようとする最中、ある青年と出会う。青年はいきなり倒れてしまい、フィアルカはなりゆきで助けることになるが…
婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようですファンタジー,ほのぼの,もふもふ,作品目次,女性主人公,婚約破棄,料理,短め(短編),聖女
傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。【IF】太陽に至る坂
「……では、書はこちらに」 わたしが言うと、今度の《太陽の御子》――ユージーンという男は少しためらい、気恥ずかしそうに文を渡した。《太陽の御子》は、遺書のようなものを残すことになっている。文字の書けないものは神殿の筆記係に口頭で伝え、言い残…
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傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。3
――違う。 鉛の塊でも詰められたような喉で、俺は必死にそう叫んでいた。 エミリーに会いに帰った。大人になった俺を見せたかった。それで――それから。 その後は。 俺は、どうするつもりだったんだ。村に帰ってエミリーに会って、そのまま村に住むな…
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傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。2
あそこ、とエミリーが指さしたのは坂道の上。もう目に見えるところにある、わけのわからない建物だった。 俺がバカみたいにひたすら眺めていた平穏な草原の後ろ側、考えまいとしていたものは、目を背けたからといって消えたり遠のいたりするものでもなかっ…
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傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。1
「大昔からさ、この坂の上から太陽がよく見えたんだって。あ、昔は天然のやつだったんだって」 メエエ、と呑気な羊の声にまじって、もっと呑気にエミリーのやつが言った。「すごいよねえ。太陽って大昔は、天然のものがあって、そのまま空に浮かんでたんだっ…
傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。 傭兵幼なじみ>本文
「傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。―坂の下で別れる前に―」目次
ユージーンは故郷の村を飛び出したが、成長して傭兵となり帰ってきた。 彼には、いつも世話を焼いていた幼なじみのエミリーがいた。 戦場をくぐり抜けるたび、思い出すのはなぜかこのエミリーだった。 そのエミリーと再会し、二人で、ある晴れた日に、のど…
傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。ファンタジー,初恋,幼なじみ,短め(短編),純愛
わたくしの美しい姉の事
わたくしの事……でございますか? わたくしの、姉ではなく? 何とまあ、異なことを仰る。 お気持ちは嬉しく思います。しかしわたくしはこの様に、到って平凡な、つまらぬ女なのでございます。 美しい姉の、妹。姉と異なり、特筆すべき処など何一つ無…
わたくしの美しい姉の事★,シリアス,ダーク,女性主人公,短め(短編)
一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る3
「――そのようにして王の一族は永く繁栄し、いまもどこかで命を存(ながら)えさせているのでございます」 一度もつかえることなく、私は語り終えた。 ――王はやがて、自らを並ぶ者なき権力者、そして唯一物語りの呪力を享受する者として“聞皇”を名乗る…
一夜百番目>本文 一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る
一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る2
――その昔。どこか、遥か遠い地の話にございます。 そこには、人を喰らう王がおりました。 いえ、いえ、何もその王は、歯をたててばりばりと頭から人民を喰らったのではありません。 むしろ彼の地は長く平和で、静謐に満ちておりました。 民はことごと…
一夜百番目>本文 一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る