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一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る3

「――そのようにして王の一族は永く繁栄し、いまもどこかで命を存(ながら)えさせているのでございます」 一度もつかえることなく、私は語り終えた。 ――王はやがて、自らを並ぶ者なき権力者、そして唯一物語りの呪力を享受する者として“聞皇”を名乗る…

一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る2

 ――その昔。どこか、遥か遠い地の話にございます。 そこには、人を喰らう王がおりました。 いえ、いえ、何もその王は、歯をたててばりばりと頭から人民を喰らったのではありません。 むしろ彼の地は長く平和で、静謐に満ちておりました。 民はことごと…

一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る1

 私が最後の一人なのだ。《語り姫》が私以外にもう誰も残っていない。百人もいた語り姫が、いまや私一人なのだ。 ついにこの日がやってきたが、怖いとは思わなかった。百年という時と百人で紡がれようとする壮大な物語の、結末を担うという感動もまだあまり…