「傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。―坂の下で別れる前に―」目次

ユージーンは故郷の村を飛び出したが、成長して傭兵となり帰ってきた。 彼には、いつも世話を焼いていた幼なじみのエミリーがいた。 戦場をくぐり抜けるたび、思い出すのはなぜかこのエミリーだった。 そのエミリーと再会し、二人で、ある晴れた日に、のどかな光景の中で語り合っているうち…。
初出: 2019年 08月02日~2019年 08月03日(「小説家になろう」)

  • 傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。1

    「大昔からさ、この坂の上から太陽がよく見えたんだって。あ、昔は天然のやつだったんだって」 メエエ、と呑気な羊の声にまじって、もっと呑気にエミリーのやつが言った。「すごいよねえ。太陽って大昔は、天然のものがあって、そのまま空に浮かんでたんだっ…

  • 傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。2

     あそこ、とエミリーが指さしたのは坂道の上。もう目に見えるところにある、わけのわからない建物だった。 俺がバカみたいにひたすら眺めていた平穏な草原の後ろ側、考えまいとしていたものは、目を背けたからといって消えたり遠のいたりするものでもなかっ…

  • 傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。3

     ――違う。 鉛の塊でも詰められたような喉で、俺は必死にそう叫んでいた。 エミリーに会いに帰った。大人になった俺を見せたかった。それで――それから。 その後は。 俺は、どうするつもりだったんだ。村に帰ってエミリーに会って、そのまま村に住むな…

  • 傭兵となって帰ってきた青年は、幼なじみの少女に告げた。【IF】太陽に至る坂

    「……では、書はこちらに」 わたしが言うと、今度の《太陽の御子》――ユージーンという男は少しためらい、気恥ずかしそうに文を渡した。《太陽の御子》は、遺書のようなものを残すことになっている。文字の書けないものは神殿の筆記係に口頭で伝え、言い残…

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