転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。5
イサーラの心臓がはねた。 突然触れられ、同時に突然心の中に踏み込まれた。 ――どこからそれを。よりによってこの男がなぜ知っている。 だがいまは、ジュリオの食い下がり方が頭に来る。 顔を上げ、灰色の瞳を睨んだ。「……どこから聞いたの、それ」…
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転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。4
この世界にニホンジンなどという部族はいない。歴史の中にもない。 だが未開の部族とは思えなかった。 彼らの文明においては、森や木はほとんど見えなかった。土すらも。 あるのは鋼鉄とか鉱石で建てたとしか思えぬ四角張った建造物の数々と、夜なのに明…
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転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。3
「ちょ、ちょっと、ハリエットと付き合いはじめたのって三ヶ月前からって……」「そうだったっけ」 ジュリオは不思議そうな顔をする。もはや興味を失っていると言わんばかりの様子だ。 ハリエットという女性とは友人でもなんでもないが、こんな態度をとられ…
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転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。2
イサーラはぐっと拳を握った。 この色鮮やかな液体たちは、むろん絵の具を溶かした水などではない。 ――薬水瓶ポーションなのである。 薬効を持つ各種植物の部位あるいは動物の部位などを乾燥させたり混ぜたり煮つめたりして、いくつかの工程の末にでき…
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転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。1
「結婚しようか」 少し遠出しようか、とでも言うような口調だった。 イサーラは男を睨んでいたので、その言葉の意味を理解するまで数秒かかった。 そしてようやく理解したとたん、「……は?」 そんな間抜けな声が出た。 ◆ イ…
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「転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。~私は研究したいので、求婚はポーション一個分より重くなってから!~」目次
「結婚しようか」「……は?」伯爵家のご令嬢イサーラにはある悩みがあり、それゆえに婚約破棄されてしまった過去があった。 しかし聖女の残したポーション薬学と出会い、イサーラは救われた。 以後ポーション研究に没頭していたが、ある日、やたらと美形に…
転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。ファンタジー,ほのぼの,ラブコメ,作品目次,初恋,女性主人公,婚約破棄,幼なじみ,異世界転生
悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。エピローグ:「薔薇色の…?」
――何もかもが、目まぐるしく過ぎた。 あまりにも幸せすぎて、グリシーヌはときどき不安になる。 自分は突然、甘く幸せすぎる夢の世界に入り込んでしまっただけで、あるとき目が覚めるとすべてが消えてしまうのではないかという不安だ。 オリヴァーは“…
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悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。12
その伯爵家には二人の姉妹がいる。 たいそう噂になっている姉妹である。 なぜよく噂になるかというと、きわめて特徴的な姉妹だからであった。 姉の名はグリシーヌ。妹の名はロジエという。 二人はきわめて対照的で、曰く――グリシーヌは“悪魔のような…
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悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。11
たっぷりと数秒はそうやって固まったあとで――かあっと頬が熱くなった。同時に胸に言いようのない罪悪感と自己嫌悪がわきあがり、言葉に窮した。 ただ心臓だけが、何よりも雄弁に鼓動を速くした。「婚約に対するあなたの些細な妨害などものの数にも入りま…
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悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。10
小さな池の上を、白鳥が優雅に進んでいく。昼過ぎの光がその白さをひときわ際立たせ、輝かせている。 グリシーヌは長椅子に腰掛け、日傘もさしたままぼんやりとそれを見つめた。 広い公園には人もまばらで、静かに考え事をするにはちょうどいい。(いまご…
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悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。9
男の冷ややかな、しかしどこか粘ついた視線がグリシーヌを睨め回す。 グリシーヌが凍りついて反論しないのを確かめてか、なぶるような笑みを浮かべた。「妹同様……あなたも、噂通り・・・の方のようですね」 グリシーヌは背を引きつらせた。とっさに顔を…
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悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。8
クレール夫人との思わぬ邂逅かいこうを経て、グリシーヌはなぜか胸の中にうっすらともやがかったものを感じるようになった。 オリヴァーという人がわからない。 ロジエのために誠実になってくれたという事実だけであればよかったのに――。 そのもやが晴…
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