中編小説

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「転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。~私は研究したいので、求婚はポーション一個分より重くなってから!~」目次

「結婚しようか」「……は?」伯爵家のご令嬢イサーラにはある悩みがあり、それゆえに婚約破棄されてしまった過去があった。 しかし聖女の残したポーション薬学と出会い、イサーラは救われた。 以後ポーション研究に没頭していたが、ある日、やたらと美形に…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。エピローグ:「薔薇色の…?」

 ――何もかもが、目まぐるしく過ぎた。 あまりにも幸せすぎて、グリシーヌはときどき不安になる。 自分は突然、甘く幸せすぎる夢の世界に入り込んでしまっただけで、あるとき目が覚めるとすべてが消えてしまうのではないかという不安だ。 オリヴァーは“…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。12

 その伯爵家には二人の姉妹がいる。 たいそう噂になっている姉妹である。 なぜよく噂になるかというと、きわめて特徴的な姉妹だからであった。 姉の名はグリシーヌ。妹の名はロジエという。 二人はきわめて対照的で、曰く――グリシーヌは“悪魔のような…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。11

 たっぷりと数秒はそうやって固まったあとで――かあっと頬が熱くなった。同時に胸に言いようのない罪悪感と自己嫌悪がわきあがり、言葉に窮した。 ただ心臓だけが、何よりも雄弁に鼓動を速くした。「婚約に対するあなたの些細な妨害などものの数にも入りま…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。10

 小さな池の上を、白鳥が優雅に進んでいく。昼過ぎの光がその白さをひときわ際立たせ、輝かせている。 グリシーヌは長椅子に腰掛け、日傘もさしたままぼんやりとそれを見つめた。 広い公園には人もまばらで、静かに考え事をするにはちょうどいい。(いまご…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。9

 男の冷ややかな、しかしどこか粘ついた視線がグリシーヌを睨め回す。 グリシーヌが凍りついて反論しないのを確かめてか、なぶるような笑みを浮かべた。「妹同様……あなたも、噂通り・・・の方のようですね」 グリシーヌは背を引きつらせた。とっさに顔を…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。8

 クレール夫人との思わぬ邂逅かいこうを経て、グリシーヌはなぜか胸の中にうっすらともやがかったものを感じるようになった。 オリヴァーという人がわからない。 ロジエのために誠実になってくれたという事実だけであればよかったのに――。 そのもやが晴…