中編小説

目次はこちら

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。7

 女性は、クレールと名乗った。近くに邸を持つ、子爵家夫人なのだという。 すぐ側だからと言われるがまま、グリシーヌは乳母と共に自宅に招かれた。突然自宅に招かれることも驚くべきことだったが、それ以上によりによって経緯が経緯だ。 それに、子爵夫人…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。6

 グリシーヌの憤慨と不信を横目に、むしろそれを煽ろうとするかのようにオリヴァーはロジエを頻繁に誘った。 天気の良い日に公園への散歩に誘うこともあれば、演奏会や晩餐会の誘いもあり、伯爵家の邸を訪れることもあった。 その頻繁さは、ロジエ本人を戸…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。5

 舞台を半円状に囲む巨大なホールで、その歌劇は演じられた。 内容は悲劇的な恋愛だった。――いかにも、年頃のご令嬢が好きそうな内容だ。 グリシーヌは特等席に座り、少し結末が気になって見入ってしまった。しかし気づけば隣のロジエからは、ごくかすか…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。4

 しかしグリシーヌの決意の強さと、実際にとれる手段とには悲しいほど差があった。 まず両親にもう一度相談してみるも、今度は怒られてしまった。姉である自分が、そのようにはしたないことを言って騒ぎ立てるのではない、というのだ。 ――オリヴァーはよ…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。3

 翌日のことである。 グリシーヌが、妹の婚約者と予想外の鉢合わせをし、憤慨してその場を立ち去り――帰宅するなり両親に訴えた、その翌日だ。 当代きっての美男子、女性達の憧れ、“夢のような”貴公子ことオリヴァー卿は、突如としてグリシーヌのもとを…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。2

 ロジエとオリヴァーの婚約はほぼ内定ではあるものの、いまだ公にはされていない。 公にされればさぞかし社交界は賑わい、羨望の溜息がいたるところで聞こえてくるだろう。だが誰もが似合いの二人であるというだろう。文句を言える者などいまい。 グリシー…

悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。1

 その伯爵家には二人の姉妹がいる。 たいそう噂になっている姉妹である。 なぜよく噂になるかというと、きわめて特徴的な姉妹だからであった。 姉の名はグリシーヌ。妹の名はロジエという。 二人はきわめて対照的で、曰く――グリシーヌは“悪魔のような…

「悪魔のような令嬢、その婚約に反対する。」目次

その伯爵家には正反対の姉妹がいる。天使のような妹と、悪魔のような姉である。ある日、誰もが羨む貴公子と、天使のような妹との婚約が成立する。悪魔のような姉はこれに“嫉妬”し、あらゆる手で婚約をぶち壊しにしようとしている…というのが世間の噂であっ…

中編目次1

「小説家になろう」「アルファポリス」等に投稿した中編系のWeb小説です。主に女性主人公の異世界恋愛ファンタジー、シリアス。ほぼ完結済。|永野水貴