一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る1
私が最後の一人なのだ。《語り姫》が私以外にもう誰も残っていない。百人もいた語り姫が、いまや私一人なのだ。 ついにこの日がやってきたが、怖いとは思わなかった。百年という時と百人で紡がれようとする壮大な物語の、結末を担うという感動もまだあまり…
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「一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る」目次
聞皇に物語りをして聞かせる語り姫。百人いた語り姫のその最後のひとりである“わたし”は、ついに自らの順番がやってきて聞皇のもとへ向かう。そこで語り、迎えた結末は…。初出 2019年5月5日(エブリスタ/三行から参加できる 超・妄想コンテスト「…
一年一夜を百束ね、百番目の姫は語るアジアン世界観,シリアス,ダーク,女性主人公
断罪の火に、悪役令嬢は目覚める4
かつての自分のように怯え震えるその声に、キャスリンは微笑した。「ええ、そうよ。お前達が望んだもの。お前達がそうあってほしいと望んだものよ」 憐れみさえこめて応じ、キャスリンは気怠く髪をかきあげた。 その仕草でさえ、吐息の一つさえ、どこか艶…
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断罪の火に、悪役令嬢は目覚める3
泣いても喚いても、変わらなかった。 キャスリンの体は押し上げられ、両腕を開かされて十字架の横棒に縛り付けられた。 縦棒には首を、胴を、足首を縛り付けられる。きつく縛り上げられ圧迫され、吐き気がこみあげてくる。 足のすぐ下は山のような藁で埋…
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断罪の火に、悪役令嬢は目覚める2
――キャスリンが処刑される。 その報せを聞いたとたん、ラッセルは商館を飛び出し、馬に跨がっていた。 昼の往来を駆け抜ける。通行人を蹴散らす勢いの人馬に、人々は悲鳴をあげて逃げ惑った。(馬鹿な! 早まったか……っ!!) ラッセルは歯噛みした…
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断罪の火に、悪役令嬢は目覚める1
――なぜ……なぜこんなことに……。 キャスリンは青ざめた唇を震わせた。 衝撃が過ぎ去ったあとは、太陽が出ているにもかかわらず体中に霜が張ったような冷たさに苛まれた。 それは、自分の体を包むものが粗末な麻のワンピース一枚だからというだけでは…
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「断罪の火に、悪役令嬢は目覚める」目次
――なぜ私なの? 元男爵令嬢キャスリンは、火あぶりの刑に処されようとしていた。 罪状は“魔女”。ひたすら善き人間であろうと努力したが、“聖女”にすらずっと疎んじられ、ついに処刑台に立たされている。 キャスリンは助けを求め――一方、唯一優しく…
断罪の火に、悪役令嬢は目覚めるシリアス,執着,女性主人公,短め(短編),魔女
聖女が異世界に残った理由4
結月は瞠目する。「番……」「ああ。番を求めて発する体臭が消えてる。頭が冷えたってのもあるんだろ。アルシュは本来、そこらの馬鹿どもより遥かに冷静だからな。恋に頭がおかしくなるってのは人も獣も同じだが、一時的なもんだ」 そう言って、カーデムは…
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聖女が異世界に残った理由3
聖女ユヅキの出番ももうない。結月自身、表舞台に出て行きたいとも思わない。 ここには何より欲したアルシュがいた。世話をしてくれる使用人たちの他には結月とアルシュだけの、閉じられた完璧な世界だった。 ――結婚したのだ、アルシュと。 結月はそう…
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聖女が異世界に残った理由2
アルシュと出会う前まで、異世界に呼ばれる前まで、結月はごく普通の女子大生だった。 何ものにも執着したことはない。 周りに流されるまま、高校では髪を染め、制服をアレンジしスカートの丈は詰め、化粧を覚え、短大に入ってピアスを開けた。まつげサロ…
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聖女が異世界に残った理由1
一目見て、殴られたような衝撃を受けた。 くらくらするような感覚、痺れに襲われ、自分ではどうにもならぬほどに目を奪われてその場から動けなくなる。 結月ゆづきは二十一年の人生の中で、はじめてそれを経験したのだった。 一目惚れ。 アルシュと目が…
聖女が異世界に>本文 聖女が異世界に残った理由
「聖女が異世界に残った理由」目次
異世界に召喚された結月は、聖女としての役目を終えてそのまま異世界に残ることにした。褒美になんでも与えると言われ、“アルシュ”を望んだ。彼こそが、結月が異世界に残る理由だった。一方通行にすぎぬ執着だとしても、軽蔑され憎悪されるとしても彼がほし…
聖女が異世界に残った理由★,シリアス,もふもふ,ヤンデレ?,執着,女性主人公,番(つがい),異世界召喚(トリップ),異世界転移,異類婚姻譚(異種族婚),聖女