聞皇に物語りをして聞かせる語り姫。百人いた語り姫のその最後のひとりである“わたし”は、ついに自らの順番がやってきて聞皇のもとへ向かう。そこで語り、迎えた結末は…。
初出 2019年5月5日(エブリスタ/三行から参加できる 超・妄想コンテスト「100」参加作/入賞)
「一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る」目次
聞皇に物語りをして聞かせる語り姫。百人いた語り姫のその最後のひとりである“わたし”は、ついに自らの順番がやってきて聞皇のもとへ向かう。そこで語り、迎えた結末は…。初出 2019年5月5日(エブリスタ/三行から参加できる 超・妄想コンテスト「…
一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る1
私が最後の一人なのだ。《語り姫》が私以外にもう誰も残っていない。百人もいた語り姫が、いまや私一人なのだ。 ついにこの日がやってきたが、怖いとは思わなかった。百年という時と百人で紡がれようとする壮大な物語の、結末を担うという感動もまだあまり…
一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る2
――その昔。どこか、遥か遠い地の話にございます。 そこには、人を喰らう王がおりました。 いえ、いえ、何もその王は、歯をたててばりばりと頭から人民を喰らったのではありません。 むしろ彼の地は長く平和で、静謐に満ちておりました。 民はことごと…
一年一夜を百束ね、百番目の姫は語る3
「――そのようにして王の一族は永く繁栄し、いまもどこかで命を存(ながら)えさせているのでございます」 一度もつかえることなく、私は語り終えた。 ――王はやがて、自らを並ぶ者なき権力者、そして唯一物語りの呪力を享受する者として“聞皇”を名乗る…