ある令嬢と騎士の、悲しい恋の果て2
ただ何人かが、年頃の娘に特有の繊細さとか、緊張とか、慎みといったもののせいではないかと言っていました。当時の私は、そんなものなのかしらと思っていました。 熱を出したり寝込んだりはしましたが、それ以外の体調不良はなかったからです。 彼は、と…
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ある令嬢と騎士の、悲しい恋の果て1
――その日、一人の老嬢が死んだ。 かつての婚約者の訃報を聞き、後を追うように亡くなったという。 身の回りは綺麗に整頓され、遺書らしきものも残っていたため、自ら命を絶ったようだとされた。 老嬢は妙齢のころ、婚約者に裏切られ、疎まれて修道院に…
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「ある令嬢と騎士の、悲しい恋の果て」目次
幼馴染で、お互いに思いあう婚約者でもあったある令嬢と騎士。だが一人の美しい令嬢が表れることで、騎士は婚約破棄し、幼馴染の令嬢を捨てた。幼馴染の令嬢は修道院に入り、長い時が経って騎士の訃報を聞いたが…|異世界恋愛・短編
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強欲な女 -亡国の宝石妃-
女は、いつでも微笑していた。 その豊かな髪は純粋な金。その穏やかな瞳は輝けるサファイア。悩ましげな、やや厚い唇はルビーをとかしこんだよう。肌の色は磨き上げた水晶のよう。歯と爪は真珠で出来て、すらりとした目鼻立ち、長いまつげは絹糸に琥珀をひ…
強欲な女★,シリアス,ダーク,ファンタジー,個人サイト過去作,女性主人公,短め(短編),純愛
婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです11
(……さて、これからどうしようかな) 厨房に戻り、食器の洗浄まで済ませてフィアルカはため息をついた。 つくったものは無事完食され、エレナの顔色は別人のようによくなった。食後にぬるま湯を飲んだあと、健やかな顔でまた眠りについたところまで見届け…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです10
「お待たせしました」 盆を手に、フィアルカはユーリイとともにエレナの部屋に戻った。 すぐに、ユーリイがエレナの側につく。「とりあえず、スープを一口だけでも」 フィアルカの言葉に、ユーリイがそっと妹の体を起こした。 少女の髪は汗でしっとりとこ…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです9
ユーリイの館の厨房は、規模でいえばマルティーノ宅に劣らぬものだった。 美食家であったマルティーノは珍しい調味料や食材、他にあまり見ない調理器具などがそろっていたが、いまフィアルカの目の前に広がる厨房はもう少し無骨な感じがした。 調味料も食…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです8
寝台に横たわっているのは、美しい少女だった。目を閉じている。掛けられた寝具から見える、折れそうなほどに細い首。その上の整った顔立ち。枕から広がる髪は、ユーリイよりも色味の落ち着いた、赤みのある茶色だった。 肌は異様なほど白い――ほとんど血…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです7
貴人らしい傲慢さとひたむきな懇願がまじったような声だった。 フィアルカは少し意表を衝かれたが、《毒魔》に冒された者が他にもいる――また礼はするという言葉に心が傾いた。 濡れ衣を着せられ、追放処分を受けたときには天を呪いたくなったが、いま、…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです6
仕留めたウェイスボアは急ぎ血抜きと内臓処理だけ行い、ラピスが男と一緒に運んだ。 森を抜け、隣国の国境の村にたどりつくと、フィアルカは宿をとった。目を丸くする主人に、ウェイスボアの肉の一部と幾ばくかの硬貨を渡し、部屋と厨房を借りた。 厨房と…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです5
長身痩躯の男で、艶やかな長靴に上質な生地の脚衣と上衣をまとっている。 だがその装いなしにも、高く形の良い鼻や、冷たく引き結ばれた唇に貴人らしさが見て取れた。 きっちりと整えられていただろう、暗めの赤毛はわずかにほつれ、眉間にかかっている。…
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婚約破棄も追放もされた元聖女ですが、料理で人助けができるようです4
隣国との国境は、深い森になっている。多くの旅人はこの森を迂回する行程をとるという。 ――ここには魔物が出るのだ。 フィアルカはラピスと共に山に入った。護衛や案内人はいない。巨狼ラピスがいてくれれば必要なかった。 それでも一応――フィアルカ…
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