転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。5
イサーラの心臓がはねた。 突然触れられ、同時に突然心の中に踏み込まれた。 ――どこからそれを。よりによってこの男がなぜ知っている。 だがいまは、ジュリオの食い下がり方が頭に来る。 顔を上げ、灰色の瞳を睨んだ。「……どこから聞いたの、それ」…
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転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。4
この世界にニホンジンなどという部族はいない。歴史の中にもない。 だが未開の部族とは思えなかった。 彼らの文明においては、森や木はほとんど見えなかった。土すらも。 あるのは鋼鉄とか鉱石で建てたとしか思えぬ四角張った建造物の数々と、夜なのに明…
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転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。3
「ちょ、ちょっと、ハリエットと付き合いはじめたのって三ヶ月前からって……」「そうだったっけ」 ジュリオは不思議そうな顔をする。もはや興味を失っていると言わんばかりの様子だ。 ハリエットという女性とは友人でもなんでもないが、こんな態度をとられ…
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転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。2
イサーラはぐっと拳を握った。 この色鮮やかな液体たちは、むろん絵の具を溶かした水などではない。 ――薬水瓶ポーションなのである。 薬効を持つ各種植物の部位あるいは動物の部位などを乾燥させたり混ぜたり煮つめたりして、いくつかの工程の末にでき…
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転生令嬢、幼馴染みの貴族から結婚を迫られる。1
「結婚しようか」 少し遠出しようか、とでも言うような口調だった。 イサーラは男を睨んでいたので、その言葉の意味を理解するまで数秒かかった。 そしてようやく理解したとたん、「……は?」 そんな間抜けな声が出た。 ◆ イ…
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