「氷の国の王」目次

兄妹は仲むつまじく暮らしていた。だがある日、瀕死の妹を置いて、兄はモーサバール山へ登った。
兄は戻らなかった。
回復した妹は、兄を追ってモーサバールへ登る。

兄に会いたい――どうして消えてしまったのか。
兄の身に何があったのか。

山へ登り、妹が遭遇したのは……。

  • 氷の国の王1

     人々が住む集落と「向こう側」を隔てるように、モーサバールという高い山がありました。 山の向こう側には、ぽつりと取り残された一つの国がありました。 高い山のために周囲は雪に覆われ、想像もつかぬほどの寒さと冷たさに囲まれたその国は、氷の国、雪…

  • 氷の国の王2

     ――娘よ、起きなさい。 厳しく、しかし優しい低い声が妹の耳に降りました。 生きることをやめた妹はそれを無視しようとしました。しかしまるで不思議な力に誘われるかのように、妹はゆっくりと眼を開けたのです。 ぼやけた視界で、雪にまみれた縦長の白…

  • 氷の国の王3

     メルシェは息を呑みました。 目覚めたとき、枕元にあった一輪の不思議な花。 目を覚ますと同時に見る見るうちに枯れていった哀れな花を思い出したのです。 あれが雪吸い草だったに違いありません。 メルシェは胸が詰まるような思いでした。 ――ありが…

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