追放テイマー>本文

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。11

 低く、だが強い力を帯びた呼び声が響いたとたん、背後の揺らめきがひときわ大きくなり、空が破れた。 巨大な亀裂から獣の咆哮が響き、空気を伝い、地に立つものをびりびりと揺らす。ロレットとその背後の魔法士たちが悲鳴をあげる。 そして空から、すさま…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。10

 高らかな――刺すような悪意の言葉が、リュフェスのこめかみを殴りつけた。 ぐらりと一瞬揺らいだ視界の向こうに、小さなジャンヌの姿が見えた。 ジャックを探して泣き、やがて剣を握るようになった小さな少女。 ――あのジャックの妹なのだから、その名…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。9

「騒ぎを起こした馬鹿どもはどいつ!?」 耳をつんざくような高い怒声。 高位の魔術師であることを示す、四つの宝石が杖を囲む紋章がローブに刻まれ、濃緑の髪につり上がった目をした女が足音荒く部屋に入ってくる。 女はカルメルとリュフェスを見、一瞬き…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。8

 カルメルと警備兵の間でわずかに会話がもたれると、警備兵は半信半疑といった様子ながらも、リュフェスとカルメルを別室に案内した。「……あれはおそらく、黒染デクランね」 別室に二人残されると、カルメルは見たこともない悲痛な表情で言った。「黒染?…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。7

 馬で三日以上かかる距離を、リュフェスの力を受けたフェンリルは夜通し駆けてほぼ一日で踏破した。 背の高い城壁に囲まれた巨大な王都の姿を、リュフェスは十年ぶりに目にした。だがそれに何かを感じる暇もなく、フェンリルはジャンヌの匂いを追って王都の…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。6

「おーい、リュー。こっちも頼むぞー」「ほいほい」 日焼けした農夫にそう声をかけられ、リュフェスは畑を耕していた手を止めた。額の汗を拭う。残りわずかだった畝を作り終え、鍬を抱えて、隣の畑の農夫の元へ行く。 そしてまた同じように畑を耕しはじめた…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。5

「リュフェスくーん!」「ぅごっ」 どん、と後ろから勢いよくぶつかられ、リュフェスは危うく前のめりになった。驚いた小鳥たちが、羽音をたてて飛び立っていく。 むにゅ、とやけに柔らかく妙な重さを持つものを背中にあてられる。「うふふ。哀愁漂う背中ね…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。4

「お、おいジャンヌ!? 何やって……」「う、うるさいな! 見ての通り寝込みを襲ってるの! 隙ありすぎ! それでも元探索者なの!?」 怒られたあげく、脇の下をくぐって伸びる白い手にぎゅうぎゅうと抱きつかれ、リュフェスは慌てた。「な、なんだよ。…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。3

 十年前、たった一人の友と呼べた男と死別し、その男のたった一人の肉親であるジャンヌを託され、リュフェスは必死にジャンヌを育ててきた。長かったような気もするし、あっという間だったような気もする。 幼い頃、お兄ちゃんは、と目を潤ませながら不安げ…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。2

 酒場から追い出されるようにして、リュフェスは文字通り昼時の大通りへ転がり出た。矢のかすった傷の他に、打撲や擦過傷で全身が軋む。(くそ……!!) 痛みで吐きそうになりながらも身を起こす。迷宮探索者の集まる酒場は、血気盛んな連中が多い。ルーフ…

追放された元テイマー、最強に育てた義妹が敗れたので真の力を解放する。1

「失せろ」 テオはいつものような不機嫌な声で、短く言った。「お荷物はもう要らない」 余地を残さない言い方だった。 テオの隣で、濃緑の髪をしたロレットがくすくすと嗤った。 テオの向かいの席に座る禿頭の男・ルーフォは常通り無口だが、寡黙というよ…